【広汎性発達障害(PDD)における問題行動への対処方法】
広汎性発達障害の子供達は、様々な問題行動を起こします。
これらは、障害の特性でもあり、無理強いをしても改善されないばかりか、間違った対応を続けていると、症状が悪化してしまう事もあります。
特に小さい頃は、本人にはコントロール出来ない部分も多いので、親や周囲の人間がそれらへの対処法を学び、接し方を工夫する必要があります。
尚、ここに載せる方法はあくまで一般的な例であり、お子さんの発達年齢や状態によってはそぐわないケースもありますので、あらかじめご了承下さい。
療育に通っている場合は、そちらでの指導に従って下さい。
パニック
先が見通せなかったり、自分の思い通りに事が運ばなかった為に、混乱している状態の事です。
大声で泣き叫んでいるような場合、「駄目」などの声掛けはまず逆効果です。
外などで、危険や他人に迷惑が掛かる恐れがある場合には、押さえ込む必要がありますが、
基本的には、安全な場所に移してしばらく放っておき、落ち着くのを待ちます。
言っている事を理解出来る子供の場合は、落ち着いてからゆっくり説明してあげましょう。
場所を変える事によって、切り替えがうまくいく場合もあります。お子さんの様子を見て促しましょう。
ある程度成長してきたら、自分で気持ちのコントロールが出来るように導きます。
保護者は、決して感情的にならず、
「泣いている子とはお話しません。」
と伝え、あくまで冷静に、毅然とした態度を取ります。
「10数える間に泣きやむ」など、ルールを決めて頑張らせましょう。
成功したら思いっきり褒めて、子供に自信を持たせます。
広汎性発達障害の子供達は、先を見通す力の弱い子が多い為、
その日の予定を、あらかじめ子供に知らせておくが肝要です。
視覚優位
と言って、耳で聞く事よりも、視覚から情報を取り入れる能力の方が上回っている子には、
絵カード
や
写真
などを用います。
絵カードについては、
書籍紹介
及び
リンク
でも紹介しているので、是非利用してみて下さい。
文字が読める子供には、紙に書いて知らせてあげると良いでしょう。
予定に変更がある場合なども、忘れずに知らせるようにします。
同一性保持
と言って、同じ道しか通りたがらない場合がありますが、
この場合もあらかじめ通る道を知らせる事で子供を安心させ、
いつもと違う道を行く事が出来るように、徐々に練習しましょう。
物事の順番にこだわる子は、しばしば思った通りにならないとやり直しをしたがりますが、
いつも子供の望むようにしてやるわけにはいかないので、こちらも徐々に慣らしていく事が好ましいでしょう。
躾
発達障害の子供の場合、強く叱ったり叩いても、改善されないばかりか、状態をひどくしてしまう事があります。
特に、広汎性発達障害の子は、耳から聞く力が弱い場合が多く、あれこれとくどくど言っても、理解出来ません。
また、言葉の裏を読む事が出来ませんので、婉曲な言い方や皮肉も、言葉通りに受け取ってしまう可能性があります。
指示は的確に、出来るだけ短い言葉で伝える
ように心がけましょう。
中には、否定文が通じにくい子もいます。
反対類推の障害
と言って、「立っちゃいけません」の逆が「座っていなさい」だと分からないケースです。
こういった場合には、「〜しちゃ駄目」ではなく、
「〜しません」「〜しましょう」
というように、
好ましい行動や、取らなければいけない行動を、
肯定的な言い方
で伝えてあげると、理解がしやすくなります。
場面に応じて気持ちを切り替える事が難しい子が多いのですが、ある程度成長してくると、
「10数えたらやめましょう」などの声掛けが有効です。
タイマー
を利用するのも良いでしょう。
また、広汎性発達障害の子供達は、ルールの変更がききにくい代わりに、一度覚えた事は忘れません。
集団生活に入る前に、出来るだけ多くのルールを教えてあげるようにしましょう。
「どうぞ」「ありがとう」「どういたしまして」
などのよく使われる単語は日頃から意識して使い、パターンとして覚えさせるのも良いでしょう。
発達年齢が低く、こちらの言っている事が理解出来ない場合は、
手で大きく×を作って「いけません。」と言って見せたり、前述の絵カードが有効です。
親は、大げさな位、怒った時の顔と褒める時の顔を使い分けましょう。
偏食
決まった食べ物しか受け付けず、ひどく食事内容が偏っている状態の事です。
普通の子供の好き嫌いと違い、広汎性発達障害の人には、しばしば味覚や触覚に異常があり、
偏食が起こりやすいと言われています。
(詳しくは、
感覚異常
を参考にして下さい。)
広汎性発達障害の子供の9割がこの問題を抱えている、との報告もありますが、
栄養が偏って病気になるような事は滅多に無いようなので、
あまり深刻に悩まない方が良いでしょう。
基本的に変化が苦手な広汎性発達障害ですが、
子供の場合、成長と共に食べられるようになる事もよくあります。
好きな物と交互に食べさせるなどの工夫をして、気長に付き合いましょう。
中には、食べ物そのものではなく、見た目にこだわっているだけの場合もあるので、
調理の仕方もや盛り付け方も、色々試してみて下さい。
料理の手伝いをさせると、興味を持ち、すんなりと食べる事もあります。
いずれにしても、無理強いは禁物です。
給食の際に教師が無理をさせ、
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
を引き起こしてしまったケースもあるので、十分注意して下さい。
自傷・他傷
頭を壁に打ち付ける、自分や他人の顔を叩くなどの攻撃的な行動がしばしば見られます。
広汎性発達障害は、他人の感情を理解しにくい障害です。
お子さんの発達レベルにもよりますが、要求を伝える手段や、自分が何を求められているのかを、
理解出来ていないのかもしれません。
原因をよく分析して、ストレスを取り除いてあげましょう。
大げさに騒いだり、叱り付けるのは逆効果です。
多動
注意欠陥/多動性障害の症状ですが、広汎性発達障害と併発するケースもかなりあります。
子供が小さいうちは、保護者は大変な思いをしますが、とにかく安全にだけは気を配るようにしましょう。
実は多くの場合、自分の意志とは関係無く身体が動いている為、本人も辛い思いをしているのです。
年齢が上がったり、療育を受ける事によって、状況を理解する力が伸びれば、見違えるほど落ち着くケースも多いようです。
危険が分からない
広汎性発達障害の子供には、しばしば危険を察知したり、回避したりする能力の乏しい子がいます。
基本的には多動と同じですが、幼児のうちは目を離さないように注意しましょう。
家の中の危険なものは、初めから子供が触れないように工夫する事をお勧めします。
睡眠異常
就寝・起床の時間が一向に定まらなかったり、夜中に何度も起きるなど、睡眠に問題のある子がいます。
睡眠が浅かったり、音への過敏性が原因と考えられ、広汎性発達障害全体の7割以上に何かしらの睡眠異常があると言われています。
睡眠の乱れは、心身の発達を妨げるので、3歳を過ぎても改善されない場合には、医師と相談して薬を使う事もあります。
常同行動
ぐるぐる回ったり、ぴょんぴょん跳ねたり、頭や身体を揺らしたりする事を好む子供がいます。
触覚や視覚に刺激を与えて楽しんでいるのです。
子供にとって楽しいものですが、没頭してしまう可能性が高いので、上手に別の遊びに誘うようにしましょう。
オウム返し
言葉の獲得段階でよく見られる現象です。
ある程度言語のレベルが発達すると自然に消えますが、大きくなっても続く場合には、
質問の意味が理解出来ていない
可能性があります。
出来るだけ、分かり易い言葉で話し掛けてあげましょう。
ひとりごと
自分を落ち着かせる為に行うケースが多いようです。
親が我慢できる範囲であれば、ある程度は認めてあげましょう。
その代わり、公共の場所では絶対にしないなど、小さいうちからルールを決めた方が、良いでしょう。
トイレトレーニング
触覚に感覚の異常がある場合、トイレトレーニングが中々進まない事があります。
しかし、放っておくとこだわり化してしまい、オムツの中でしか排泄出来なくなってしまう可能性もあるので、
きちんとトイレで出来るように、トレーニングをする必要があります。
ちなみに、トレーニングの開始に最適な時期は、お子さんによって違ってくるので、よく見極めなければいけませんが、
排泄の間隔が二時間以上空いてから
というのが、一般的な目安のようです。
具体的な方法については、
書籍紹介
の身辺自立の項で本を紹介しているので、そちらを参考にして下さい。